「リンパ腫」という病名を聞いたことはありますか?ハリネズミに多いと言われる腫瘍のひとつですが、実際にバジルちゃんの診断を受けるまで飼い主も詳しく知りませんでした。獣医からリンパ腫と診断された時はショックと不安で、泣きながら帰宅したのを今でも覚えています。
2024年10月にリンパ腫と診断されてから約3ヶ月間の闘病を頑張り、2025年1月18日に虹の橋を渡りました。今回はバジルちゃんの頑張った記録と共にリンパ腫について詳しくお伝えしていきます!※実際の画像や動画があるので、苦手な方はご注意ください。
この記事でわかること
✓ ハリネズミのリンパ腫って何?
✓リンパ腫の初期症状
✓リンパ腫の治療方法
✓バジルちゃんの闘病記録
✓飼い主としてできること

ハリネズミのリンパ腫って何?
ハリネズミにとって身近な腫瘍のひとつが「リンパ腫」です。この病気は、免疫細胞の一種である「リンパ球」ががん化してしまうことで起こります。体のあちこちに症状が出る可能性があり、早期発見と正しい知識がとても大切です。
ハリネズミのリンパ系
ハリネズミの体には「リンパ管」と「リンパ節」が全身に張り巡らされており、体内の異物を排除したり免疫を保つ働きをしています。この通路を「リンパ系」と呼び、病気から体を守る大切な役割をしています。
リンパ球ってなに?
リンパ球は白血球の一種で、ウイルスや細菌などの「体にとって異物」を見つけて攻撃する免疫細胞です。
体の中をパトロールするように巡回し、侵入者をやっつける「正義の味方」のような存在です。リンパ管やリンパ節、血液の中に広く存在しています。

リンパ球のがん化
本来、体を守るはずのリンパ球が何らかの理由で異常を起こし、がん細胞になってしまうことを「リンパ腫」といいます。がん化したリンパ球は増殖のブレーキが効かなくなり、正常な細胞を押しのけてどんどん増え、体の中で悪さをするようになります。
リンパ腫の転移
がん化したリンパ球(=リンパ腫)はリンパ管を通って移動することができます。リンパ管はリンパ球や老廃物などが流れる通路のようなものです。血液が血管という道を通るのと同じように、リンパ液はリンパ管という別の道を通って体の中を巡ります。がん化したリンパ球(=リンパ腫)はこの通路を使って全身に広がり、リンパ節や臓器などに転移します。
そのため、腫瘍を摘出してもリンパ腫の治療・完治にはなりません。
リンパ腫の肥大化
がん化したリンパ球(リンパ腫細胞)はリンパ節などにとどまり、異常に増殖を続けます。その結果、リンパ節がパンパンに腫れてしこりのように目立つようになります。

がん細胞は、生き延びるためにエネルギーを大量に消費します。スイカやミルワームなどのおやつは栄養素として腫瘍の成長を促してしまう可能性があるため、与える量や頻度に気を配る必要があります。
バジルちゃんの転移スピード
バジルちゃんのリンパ腫が判明してから3週間に1回のペースで病院へ通う日々が始まりました。リンパ腫の診断から約3週間後、エコー検査で脾臓への転移が確認されました。さらにその3週間後には腫瘍の数が増え、リンパ腫が恐ろしいスピードで広がっていることがわかりました。

この頃からバジルちゃんはお腹のマッサージを受け入れてくれるようになり、優しく触れながら腫瘍の変化や転移の様子をチェックできるようになりました。

リンパ腫の初期症状と変化
ハリネズミのリンパ腫は初期症状がとても分かりにくいです。体の異変や行動の変化など、小さなサインを見逃さないことが早期発見のカギとなります。ここでは、バジルちゃんが実際に見せてくれた症状や行動の変化を時系列でまとめてご紹介します。
目の違和感
2024年9月中旬頃から、バジルちゃんの目に違和感が見られるようになりました。右目がしょぼしょぼするような仕草をしていたため、年齢的にも白内障かな?と思っていました。
病院で診てもらったところ、角膜炎との診断。目薬での治療を毎日がんばってケアしていました。
行動の変化
目の違和感と同じ頃から、昼間は必ずハウスの中で眠っていたバジルちゃんがハウスの外でも眠るようになりました。今思えば体調の異変を伝えてくれていたのかもしれません。

呼吸器の異常と声の変化
10月上旬、今までに聞いたことのない声が出るようになりました。特に怒っている様子もなく、針も立てず落ち着いていたため何かおかしいと感じました。その日のうちに受診すると「鼻腔炎」と診断され、吸入治療(ネブライザー)と投薬を開始しました。
首元のしこりを発見
10月下旬、鼻腔炎がなかなか治らず再診しました。ご機嫌な様子でスンスン上を向いていたバジルちゃんを見ていたところ、首元にぷっくりとしたしこりがあるのを飼い主が発見しました。過去に乳腺がんを患ったモネちゃんの経験もあり、その日に鎮静を行ってもらい、針で腫瘍の細胞を採取して病理検査へ。後日「リンパ腫」と確定されました。

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食欲増加の変化
まるで病気と闘う準備をしているかのように、少食だったバジルちゃんがしっかりごはんを食べるようになりました。その姿に飼い主としての覚悟も強まり、バジルちゃんの強い意志を感じました。

リンパ腫の治療方法
残念ながらリンパ腫は完治の難しい病気です。バジルちゃんが少しでも辛くないように、1日でも長く一緒に過ごせるように考えた結果、リンパ腫の進行を少しでも遅らせる「維持療法」と症状を和らげる「対処療法」を組み合わせることにしました。
ここでは、実際にバジルちゃんが使用したお薬や治療内容をご紹介します。※症状には個体差があるので参考程度にご覧ください。
抗がん剤治療
ロイナーゼ(アスパラギナーゼ)は抗がん剤のひとつで、がん細胞の栄養源であるアスパラギンというアミノ酸を分解する作用があります。リンパ腫のリンパ球はアスパラギンがないと増殖できないため、がん細胞の増殖スピードを抑える効果が期待されます。

ステロイド
ステロイド(プレドニン)は炎症を抑える働きや免疫の反応をコントロールするお薬ですが、がん治療ではがん細胞の活動を弱めるという目的でも使われます。ロイナーゼと併用することで、リンパ腫の進行を遅らせたり症状を和らげるために使用していました。ステロイドは1度使い始めたら基本的に毎日投薬が必要です。途中で急にやめてしまうと、体調のバランスが崩れたり症状が急激に悪化することがあります。

ステロイドはリンパ腫の進行を抑えるために欠かせないお薬ですが、長期的に使うことで胃や肝臓に負担がかかることもあります。そのため、バジルちゃんの治療では ステロイドの副作用を抑えるためのサポート薬も一緒に毎日飲んでいました。
サポートお薬の内容
✓ガスター
胃酸の分泌を抑えて胃を保護。
✓プリンペラン
吐き気や胃もたれを防ぐ。
✓マロピタット
副作用による吐き気を緩和。
✓ ビオフェルミンR
腸内環境を整える整腸剤。
治療のスケジュール
リンパ腫の治療にはがん細胞の増殖サイクルに合わせて行います。がんの細胞分裂は約3週間前後とされており、そのタイミングでロイナーゼを注射することになりました。徐々に効果が薄れる部分はステロイドが補ってくれるイメージです。

リンパ腫の治療費
リンパ腫の抗がん剤治療は決して安いものではありません。担当獣医と相談した上で、バジルちゃんが辛くない最善の治療方法をすると決めました。※ハリネズミの病状、獣医の考え方によっても治療方法は異なります。
1回の抗がん剤治の費用は保険適用で約¥4,821-(未加入の場合は¥16,071-)でした!
内訳
再診料 ・・・¥1,500
ロイナーゼ ・・・¥6,500
皮下注射 ・・・¥2,000
皮下点滴 ・・・¥1,000
マロピタット ・・・¥900
処方料 ・・・¥1,500
調剤料 ・・・¥1,000
内服薬 ・・・¥220
合計 ¥14,610(税抜)
※保険未加入100%実費の場合
保険負担額(70%) ‐¥11,250
合計 ¥4,821(税込)
バジルちゃんはアイペット70%プランの保険に加入していたため、1回の通院に12000円まで保険が適応されています。

バジルちゃんの闘病記録
バジルちゃんの闘病の記録を時系列でご紹介します。ここでは抗がん剤を投与したタイミングでの変化や飼い主が感じたことをお伝えしていきます。※辛そうなシーンもあるので苦手な方はお気を付けください。
日にち | 抗がん剤 | 体重 | 食欲 | ホイール | 症状 |
---|---|---|---|---|---|
11月1日 | 1回目 | 375g | ◎ | ◎ | 今までと変わらず元気。 |
11月21日 | 2回目 | 417g | ○ | ○ | 元気だが、うんちがツンと臭うようになった。エコーで脾臓への転移が確認。 |
12月13日 | 3回目 | 421g | △ | △ | 食欲が低下し、吐き気・倦怠感が見られるようになった。 |
12月26日 | 4回目 | 434g | ○ | △ | 軟便、口呼吸が気になるように。ハニーワームを食べ始めてから食欲が回復。 |
1月16日 | 5回目 | 386g | △ | △ | 食欲が低下し、眠る時間が増加。時折、口呼吸をして辛そう。 |
11月1日 抗がん剤1回目
本当に病気なのか疑うほど、元気いっぱいなバジルちゃん。毎日しっかり走って、ごはんを完食して健康的な暮らしをしていました。我が家のハリちゃん3匹の中でも誰よりも走っていました(笑)
11月21日 抗がん剤2回目
元気食欲もあり、のんびり穏やかに過ごしていました。毎日のホイールも欠かさず、まだまだ体力がしっかりあるように感じました。
しかし、この頃からうんちの緩さとツンとした臭いが気になるようになりました。見た目は健康的でも、体内の状態はあまり良くないことを悟りました。2回目の抗がん剤の注射と転移確認のためエコー検査もしましたが、脾臓への転移が確認されました。そして「残念ですが年を越せるかどうか…」と余命宣告を受けることになりました。

泣きながら帰宅した飼い主ですが、ここからはバジルちゃんが穏やかに過ごせるように意識を変えました。
12月13日 抗がん剤3回目
リンパ腫と診断されてから約1ヶ月半、少しずつ体調の変化が出てくるようになりました。調子のいい日はホイールも楽しみますが、調子の悪い日は倦怠感や吐き気でぐったりする日もありました。
ホイール上の方が気が紛れるのか、この態勢で眠ることが増えました。
調子の悪い日はホイール下で眠ることが多かったのでわかりやすかったです。体を冷やしたらいけないので、この下にも小さめのヒーターを置いていました。
少しずつ体力が落ちてホイールの上り下りが辛そうだったので、ホイールを横向きに設置して高さを低くしました。12月21日がバジルちゃんの最後のランニングとなりました。
うんちに血が混じるようになってきたため、お薬に調整剤と止血剤も入れて処方してもらいました。
12月26日 抗がん剤4回目
3週間に1回の抗がん剤ですが、年末年始の兼ね合いで少し早めの病院でした。
この頃からたまに口呼吸をするようになり、体調の波がさらに激しくなりました。体調の優れない日はごはんをあまり食べることができず、嘔吐する日も。身体が受け入れてくれない以上、毎日の投薬も難しく…“飼い主のエゴで頑張らせすぎるのもどうなのかな?”と考えるようになり、バジルちゃんの生命力を信じて食事の判断も任せることにしました。

そんな時、ハリ友さんから栄養価の高い「ハニーワーム」の存在を教えていただきました。
ミルワームよりも栄養価が高く、嗜好性も高いようです。バジルちゃんが少しでも口にしたいと思うものがあるなら…とすがる思いで購入したところ、ハニーワームだけは夢中で食べてくれました。
皮の部分は消化にあまり良くないとのことで(かなり抵抗ありましたが…)ハニーワームの中身だけを出して、シリンジで与えることにしました。今まで嫌がっていたシリンジもハニーワームの美味しさのおかげで喜んで受け入れるようになったバジルちゃん。お薬入りでも抵抗なく受け入れてくれるようになり、体調のよい日が増えました。

この日以来1回5匹分のハニーワームを1日2回お薬入りで与えたところ、自らごはんを食べるほどにまで回復しました。
一食分のメニュー



口呼吸をすることがあり、獣医と相談して酸素室の導入も考え始めていました。バジルちゃんの場合は一時的だったので、気休め程度ですが酸素缶を常備すことにしました。先生に酸素缶について伺ったところ、「一時的な処置にはなるけど、ないよりはあった方が良い」と回答をもらいました。
耳のよいハリネズミは酸素缶の音にびっくりしてしまうので、長めのチューブにミニロートを付けて酸素を与えていました。

1月16日 抗がん剤5回目
うんちは相変わらず緩めですが、余命とされていた年を越すことが出来ました!先生曰く、リンパ腫と診断されてから1ヶ月ほどで亡くなる子も多いそうで、お薬が効いてる証拠とおっしゃっていました。

この頃のブームは大好きなペット用お肉と特製スープがお気に入りで喜んで食べていました。
特製スープ



もともと食へのこだわりが強いバジルちゃんに、先生から離乳食用のコーンはハリネズミに与えても大丈夫とアドバイスをもらいました。ヘルスチャージとエナジー500はハリ友さんに教えていただいたものです。ハリネズミフードをあまり口にしなくなったため、とにかく食べれるものを中心に与えていました。
年が明けてからは眠る時間が増えたように感じました。体力の低下で足を引きずる様子もありましたが、それでもホイールの上でくつろぐバジルちゃんの姿に安心していました。
2025年1月17日、いつもならホイールの上かハウスでしか寝ないバジルちゃんがごはんの前で寝ていました。いつもとは違う様子に「そろそろかもしれない…」っとバジルちゃんとの時間が残り僅かなことをなんとなく感じました。夕方のごはんの時間にはしっかりスープを飲み、ホイールの上でのんびりくつろいでいました。
そして2025年1月18日深夜1時頃、手をつないでおでこをなでなでしているうちに飼い主の腕の中で安らかな眠りにつきました。針も立てないほど、穏やかな最期を迎えました。
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飼い主ができること
リンパ腫はハリネズミの体内を時間と共に蝕んでいく病気です。お薬で緩和ケアをしつつ、ストレスのない快適な環境作りを心掛けましょう。
異変があれば病院へ
リンパ腫の症状を楽にする緩和ケアや対処療法をする中でも体調や行動に変化が出てきます。気になることがあれば担当獣医に相談し、その都度対応するようにしましょう。
抗酸化ケア
リンパ腫の進行を少しでも遅らせるために、「抗酸化」を意識するようになりました。ハリネズミにとってビタミンCは必須栄養素ではないそうですが、抗酸化の補助としてマルチビタミンを取り入れていました。バジルちゃんはしっかりお水も飲めていたので、3日に1回程度のペースで給水機のお水に混ぜていました。

ヘッジホッグブースターはオメガ3脂肪酸を含む亜麻仁ミールをメインに、ビタミンE・A・D・Bをバランスよく摂れるサプリメントです。リンゴのような美味しそうな匂いがします。

衛生面の徹底
リンパ腫とお薬との影響でうんちが緩くなるので、床が汚れやすくなります。バジルちゃんとてもキレイ好きな子だったので、ペットシート をこまめに取り替えてストレスを与えないように心掛けました。汚れる場所が決まってる所にはペットシートを小さめにカットしてマスキングテープで固定していました。
お尻が汚れやすくなるので、こまめにウエットシートでふき取っていました。また、体調の優れた日を狙ってお風呂に入れるようにしていました。

体力に合わせたホイールの設置方法
バジルちゃんはホイールで走るのも寝るのも好きだったので、ホイールに登りやすくなる工夫をしていました。体力が落ちた頃、ホイールの段差がキツくなってきたのでホイールを横向きにして上りやすくしました。
実際に使用することはありませんでしたが、ホイールに上るためにドアストッパーをスロープにする予定でした。

温度の管理
免疫が下がらないように27℃をキープし、ホイール下など野良寝する場所にも床ヒーターを設置しました。バジルちゃんのいるケージ下にはミニ床暖が置かれています。
リンパ腫のまとめ
リンパ腫のまとめ
✓リンパ腫は完治の難しい病気
✓治療は緩和治療と対処療法
✓ステロイドは飲み毎日続けることが大事
✓QOLを高めてストレスのない暮らしをする
今回はハリネズミのリンパ腫について詳しくお伝えしました。1つの腫瘍から始まったバジルちゃんのリンパ腫の闘病生活はたった3ヶ月の間に7つに増えていました。それでも力強く、前向きに頑張っていたバジルちゃんの生きた証を残したいと思い記事にすることにしました。
今、リンパ腫で困っているハリちゃんと飼い主さんのお役に立てば幸いです。
